白髪交じりの髭を蓄えた初老の男性は、俺たちをゆっくりと見渡してから、ベッドに目を留めると

「よかった……。あの方はご無事のようですね……」

　とても安心したように、深く息を漏らした。

　若干掠れた声だったが、穏やかで丁寧な言葉使いに、少しだけみんなの警戒心が揺るんだ。

　しかし、父さんだけは警戒を緩めるようすはなく

「何者だと聞いてるんだ！」

　眉間の皺を深くし、厳しい視線を向けた。

　その視線を受け、男性は一度目を瞑ると、意を決したように

「申し遅れました……。私はコッカーと申します」
　
　そう言って頭を下げた。

　周りを囲まれ、不審な視線を向けられているこの状況で、姿勢良く椅子に腰かけ堂々としている男性に、普通では身につかないだろう風格を感じていると

「そこにいるトランクスがおまえたちを助け出した。感謝するんだな」

　父さんは俺の方へ視線を向けた。

「ああ……あなた様が……！　そうですか……ありがとうございました……！」

　俺を見るなり深々と丁寧に頭を下げるコッカーと名乗る男性に

「い、いえ！　当然のことをしただけですから！」
　
　俺の方が恐縮していると
　
「まだ聞きたいことがある。言え、誰に捕まった」

　父さんが眉間に深い皺を刻んだまま続けた。

　誰もが聞きたいだろうその質問に、部屋の空気がピリッと張り詰めると、髭に覆われた口元は動き始め

「……私たちを、あの場所に閉じ込めたのはトワとミラという者たちです」

　衝撃の名前を口にした。

　思わず

「トワとミラ？！」

　嫌な予感が見事に当たり、俺が両手を握りしめると