今のところ、ベッドで眠る少女に変わったようすは見られない。

　少女が発していた禍々しい気はこの世界に着く前には消えていて、あの状態を知っているのは俺とパートナー、そして時の界王神様だけだった。

　一体、あの気は何だったんだ……？

　まさか、アレのせいか……？！

　思い当たることはあったが、それはあり得ない……！

　そう思って、首を振った。

　しかし　

「一応、父さんたちには話しておいた方がいいな……」

　呟いてから、少女とは友達らしい彼女のことが頭を過ぎった。

　……彼女には、知らせない方がいい。

　ベッドで眠る少女を不安そうに見つめる顔を思い出し、そう判断していた。

　これ以上、彼女にあんな顔をさせちゃいけい。

　彼女には、笑顔でいて欲しい……！

　さっきの、輝くような笑顔で俺の名前を呼ぶ彼女の姿が甦り、胸のあたりがふわりと温かくなった。

　だけど――。

　あの笑顔が、俺に向けられたものじゃなかったんだと思うと、途端に虚しくなった。

　この世界に来ていたもう一人の俺……。

　あの笑顔は、その「俺」に向けられたものだったんだと思うと、何かを期待してた自分が恥かしくなり

　……な、何考えてるんだ俺は？！

　慌てて、芽生えそうになった感情を打ち消した。

　そんなこと考えてる場合じゃないだろ……！

　そう自分を非難して、まるで死んだように眠る少女に目を向けた。

　やっぱり、見覚えがないな……。

　記憶を辿ったが「終わりと始まりの書」が記す歴史の中に、少女の姿を見たことはなかった。

　一体、彼女たちは何者なんだ？