「怒りって感情は自分の潜在能力を引き出す時に、結構重要なんだ。真琴も剣道っちゅーのをしてるから、分かんだろ？」　

　悟空さんにそう聞かれて腑に落ちることがあった。

　試合の時は怒りって感情を持ったことはないが、稽古中は怒り……殺意に近い怒りを持つことがある。

　それは、私が尊敬する柴先生と稽古してる時だ。　

　柴先生は、冷静な口調で私を追い詰めてくる。

　あの冷静な口調が、私に怒りの感情を持たせる。

　だけど。

「怒り」という感情を露わにした時程、私は空回ることが多い。

　そして、それを先生に指摘され、ムカムカした気持ちを抑えながら、何とか冷静になる。

　柴先生の「怒り」という感情に対する指導は「秘めること」だ。

「怒り」という感情を心の内に秘め、それを力に変える。

　そう教わってきた。

　悟空さんの言うように、もし、ベジータさんが私を「怒らす」ことで、潜在能力を引き出そうとしてるのなら、それは無理かもしれない。

　長年「怒り」という感情を「秘める」よう指導されてきた私は、おそらく怒りの感情を爆発させることが出来ないんじゃないかと思う。

　ストイックなところが似てる二人だが、指導方法は真逆だったようだ。

　そう思うと

　残念だったな、ベジータさん！

　私は思わず、あのオヤジの思惑が外れたことに、ニヤリとした。

　あんたの思い通りになると思うなよ！

　私は、私のやり方……柴先生の教えを基に「神の気」を使いこなしてやる！！

　心の中でそう宣戦布告すると、私は悟空さんに「神の気」を実体化する別の方法はないかと尋ねていた。