トランクスさんは私を安心させるように、振り返って微笑んだ。

　見覚えのある優しい笑顔とは、どこか違うその笑顔に、さっき名前を呼んで振り返った時のトランクスさんの驚いた顔を思い出した。

　……やっぱり、違う人だ。

　このトランクスさんは、私の知ってるトランクスさんじゃないんだ。

　そう実感した。

　そっか……。

　突然名前呼んだりして……そりゃ、驚くよね……。

　分からなかったとはいえ、自分のしたことを恥かしく思ってると
　
「安心して下さい。見張りを兼ねて、俺が彼女を見てますから。目を覚ましたら知らせますよ」

　動揺する私を察したのか、安心させるようにトランクスさんはにこりと微笑んだ。

　そう言われて

「……はい。ありがとうございます」

　呟くように答えてから

「あ、あの！　さっきは、すみませんでした……。私、トランクスさんを違うトランクスさんと間違えてしまって……。急に名前を呼んだりして……」

　そう言って頭を下げると、少し間を置いてから「ああ」っていう、柔らかい声が聞こえてきた。

　そっと顔を上げて、大好きな人と同じ顔をおずおず見つめると

「もう一人の俺が、この世界に来ていたんですよね。それなら、間違えても仕方ないですよ。気にしないで下さい」

　トランクスさんは気にしてないっていうふに、にこりと微笑んでくれた。

「もう一人の俺」

「気にしないで下さい」

　そうトランクスさんが発した他人行儀な台詞に

　……やっぱり、違う人だ……。

　私は距離を感じると、胸の中に寂しい風が吹いた気がした。