もしかしてパパは、真琴を怒らせて「神の気」を引き出そうとしてるのか……？！

　十分有り得る考えに、眉を寄せてると、視線を感じてハッと我に返った。

「どうしたの？」

　じっと見つめてくる茶色い瞳に

「え？　あ、いや、別に何でもないよ」

　そう言って目を逸らすと

「そう？　何か難しい顔してたけど」

　梨子は首を少し傾けながら、俺の顔をじっと見つめた。

「何でもないって。それより、真琴はこれからも、悟空おじさんとだけ、稽古を続けるんだろ？」

　梨子の、勘ぐるような視線をかわすように聞くと

「うん。今まで通り悟空さんと稽古するって。でも、稽古の仕方は変える必要があるって言ってた。何かね、マコちゃんてば、今まで以上にやる気満々なの」

　梨子は「スゴイよねー」って、感心したように付け足した。

　……おい。それって、パパの作戦にまんまと引っ掛かってるんじゃないのか？
　
　ニヤリと口の端を上げて笑うパパの顔が浮かんで

　いやいや、ダメだって！！

　顔が強張った。

　真琴の「神の気」は少ししか解放しちゃダメなんだろ？！

　もしかして、パパは真琴の「神の気」を全部解放させようとしてるのか？！

　……。

　……パパなら考えそうだよな……。

　確信はないけど、パパの企みに気付いて動揺してると

「ホント、凄いよね……「神の気」とか」

　梨子から、少し沈んだような声が聞こえてきて、俺は隣りに座る梨子を見た。