夕食を食べた後、部屋でのんびりくつろいでると、部屋のドアをノックする音がした。

　……誰だよ。

　小さく溜息を吐きながらも、胸の辺りには淡い期待が過ぎり

　なに期待してんだ……。

　そんな自分に呆れながら、ドアの向こうに居る気を窺うと、微かに梨子の気を感じた。

　っ！
　
　ドアの前に居るのが、期待してた梨子だって分かると、胸の辺りが急にソワソワと落ち着かなくなり

　なに緊張してんだよ……！

　そんな自分にツッコミながら「はい」と返事をして、ドアを開けると、そこには、手ぶらの梨子が立ってた。
　
　いつもなら、勉強道具を抱えて来る筈の梨子に

「……何？」

　不審な目を向けると、梨子は上目遣い気味に「いま、大丈夫？」って、小首を傾げ聞いてきた。

　っ？！

　不覚にも、その仕草にドキリとしながら「別に……大丈夫だけど……」ボソッと口先で答えると、梨子はパッと表情を明るくして

「よかったー！　トランクス君とね、少し話したかったんだ」

　嬉しそうに笑顔を浮かべた。

　っ！？

　その笑顔と言葉に、顔が一気に熱くなって

　な、何だよそれ……！？

　心の中でぼやいてると

「部屋、入ってもいい？」

　梨子は相変わらず、無警戒な態度を見せてきた。

　……少しは警戒しろよ……。

　目の前の、よく懐いた子犬みたいな梨子を呆れて見つめながら「いいよ」って答えた俺は、別に、何かを期待したわけじゃない。