近くで聴くと、彼女が甘く可愛らしい恋の歌を口ずさんでいるのが、ハッキリと聴こえた。
　
　初めて聴く、その詞やメロディに耳を澄ませていると、パシャリという水音が一緒に聞こえてきた。

　？　

　不思議に思って、歌声が聴こえる部屋をよーく見ると、その窓は湯気で曇っていて　

　っバスルーム？！

　真上にあるその部屋が、バスルームだったことに気付いた。

　彼女が入浴中だということが分かると、その窓の真下にいる自分が、かなり誤解を招きそうな状況にあることに焦った。

　こ、ここから離れないと！

　そう思うも、彼女の唄をもっと聴いていたくて、ここから離れ難く思っていると

「何してんの？」

　背後から声を掛けられ、肩がビクリと跳ねた。

　し、しまった……！

　そう思いながら、ゆっくり振り返ると、そこにはトランクスが立っていた。

「ど、どうしたんだ……？」

　焦りながら尋ねると、トランクスも一瞬気まずそうな顔をしてから

「え。あ、俺は、散歩だよ、散歩」

　そう答えた。
　


「……それにしても、声を掛けたのが俺でよかったね。もし、ママに見つかってたら、面倒なことになってたよ」

「あ、ああ……。そうだな……」

「……まったく。いくら梨子のことが好きだからってさ、風呂を覗くのはどうかと思うよ」

　ぼそりと言うトランクスに

「っ！？　俺はただ、梨子さんの歌を聴いてただけで……。そ、それに、俺は梨子さんのことを、そんなふうには……！」

　反論しようとすると