父親をそんなふうに思われるのは、息子としては誇らしいはずなのだが、それが彼女だと思うと複雑だった。

　じゃあ……。　

　俺のことは、どう思ってるんだろう……？

　期待して聞き耳を立てていたものの、結局、梨子さんの口から俺の名前が出てくることはなく、ガッカリしたのは言うまでもない。

　今まで、人にどう思われているかなど、大して気にもしなかったが、彼女にどう思われてるのかを気にし始めた自分に

　ああ。これが恋っていうものなのか……。

　そう実感するとともに、恋という初めての経験に、自分の気持ちをどうすればいいのか分からない自分を、情けなく思った。



　独りで部屋に居ると、どうしてもさっきの梨子さんと母さんの会話を思い出してしまい、心が落ち着かない。

　寝るにはまだ早い時間で

　身体を動かして気分転換しよう……。

　そう思って、ふと窓の外を見ると、都の街の灯りが見えた。
　
　未来の西の都にはまだない景色――。

　その夜の街を覆う光に誘われるように

　……夜風に当たれば、この気持ちも少し紛れるかもしれない……。

　そう思った俺は、ベッドの傍に立て掛けていた剣を手に持ち、部屋を出た。

　外に出ると、ふわりと暖かい風が頬を撫でた。

　西の都の夜は、昼間との温度差はほとんどなく暖かい。

　それは、俺のいた未来の世界でも変わらない。

　変わっていること……未来の世界と違うことと言えば、やはり都の街並みだ。

　人造人間を倒し、地球全体が復興し始めたとはいえ、俺の世界は、まだまだこの世界には及ばない。