心の中で首をブンブンと振りながら

　お、俺が梨子に、変な気なんて起こすわけないだろ……！
　
　いくら梨子が俺のこと、その……好きだからって、俺は何とも思ってないんだから……！

　なんてことを、心の中で叫んでると

「あ、いま何時だろ？！　ゴメンね、トランクス君！　遅くまで付き合わせちゃった！！」

　梨子が慌てた顔を向けてきた。

「い、今更だな！」

　頭の中を誤魔化す為に、わざと大きな声を出してから

「じゃ、俺はそろそろ戻るぞ」

　椅子から立ち上がると「私も！」梨子もそう言って立ち上がった。

「もういいのか？」

　ここに来た時より、明るくなった気がする顔に聞くと

「うん！　ピアノ弾いたらスッキリしたから。それに、トランクス君と一緒にピアノを弾けて満足したし」

　梨子は、はにかむように笑った。




　慣れた手つきで、ピアノをカプセルへと戻し

「じゃ、帰ろっか」

　振り返る梨子に「ああ」って答えると、俺は無意識に浮かび上がってた。

「え、飛ぶの？！　わー、いいなー！　ねぇ、私も飛んで帰りたい！！」

　キラキラした顔にせがまれ

　しまった……！

　俺は無意識に舞空術を使ったことを後悔した。

　そんなことを思ってる俺の気も知らずに

「私ね、ずっと飛んでみたいって思ってたの！」

　わくわくって感じで、期待する顔を向けてくる梨子に

「……分かったよ」

　溜息を吐くように答えた俺は、この後、更に後悔するはめになるなんて、思いもしなかった。