四阿の天井に付けられた小さな照明は、スポットライトみたいに、ピアノと梨子を照らしてる。

　その光景は、まるで映画のワンシーンみたいで、俺は思わず足を止めた。

　それは、ママの物だっていう、見るからに高級そうなグランドピアノや、深夜の森っていう場所のせいかもしれない。

　けど、梨子が鳴らす、表現力のあるピアノの音や奏でる姿、作り出す雰囲気――。

　全部がつくりものみたいで、幻想的に見えた。

　音楽に関して俺は素人だから、詳しいヤツ等が聴いたらどう思うか分からないけど、梨子の弾くピアノは圧倒的な何かを秘めてる気がした。

　少なくとも、俺はそう感じた。

　曲が終わるまで、俺は舞台袖みたいな仄暗い木の陰から、寂しいピアノの演奏に聴き惚れてた。



　演奏が終わって

「こんな時間に何してんだよ」

　呆れた顔をつくって、木の陰から声を掛けると

「っトランクス君？！」

　梨子は驚いて、肩をビクッと震わせた。

　ま、確かに。こんな深夜に、誰も来ないと思うよな。

　でも、それはお互い様だけどな……。

　なんて思いながら

「ピアノなら家で弾けばいいだろ」

　そう言って、梨子の方に歩いて行くと、梨子は「はぁぁ、びっくりしたー……」

　って、胸を撫で下ろしてから

「トランクス君こそ、どうしたの？！」

　目を大きく開いて、質問で返してきた。

「……寝ようとしたら、外からピアノの音が聴こえてきたから、気味悪くて見に来たんだよ」

　不機嫌なふりをして答えると