たった今「気の合わない友達なら、友達なんていらない」ってことを言ったが、それは私に問題があるんじゃない。

　大概の人間がそういうスタンスだから、私もそうならざる得ないんだ。

　明らかに、道徳や倫理に反してるサイコパスのような人間は無理だが、そうでないなら、私は誰とでも「友達」って関係を築けると思ってる。

　けど、残念なことに、これまでの学校生活の中で、周りに共感してくれる人間は少なかった。

　別の学校にでも進学してれば、私を受け入れてくれるクラスメイトがいたかもしれない。

　そう思うと、現在通ってる高校を

「剣道の強豪校」

　という理由だけで決めたのは間違いだったかもしれないなぁ。

　と、たまに後悔することがある。

　が、剣道部には話しの分かる、先輩なり同期が数名はいるので、それが救いだ。

　もし、彼女たちがいなかったら、精神的ストレスを発散出来ずに、イライラした学校生活を送っていただろう。

　と、いうわけで、私の学校での居場所は、剣道部、及び道場にしかなかった。

　ああ。

　あとは梨子だ。

　梨子も私と同じで、相手の話しを聞き、誰でも受け入れるタイプだ。

　お互いそんなふうに育ったのは多分、家庭環境が似てたからかもしれない。

　寺の娘である梨子は、子供の頃から、坊主である父親から説法じみた話しを聞かされ、問答するような、一般的には変わった家庭で育った。

　そして我が家も、高校で日本史を教えてる父は議論をするのが好きで、子供相手に難しい言葉を交えながら話してくる、変わった父親だった。