梨子さんの話しに、ビルス様とウイスさん、そして父さんまでもが、黙って聞き耳を立てていた。

　梨子さんの話しが終わると

「コッカ―さんとポメ姫はそういう関係でしたか」

　腑に落ちたとばかりに、呟くウイスさんに

「二人の関係に気付いてたの？！」

　母さんが目をパチリと見開き尋ねた。

「ええ。ただの主従関係ではないような気がしていたのですが……そういうことでしたか」

　しみじみと答えるウイスさんに

「ウイスさんて、そういう勘みたいなものにも優れてるのね」

　母さんは感心したようにウイスさんを見つめた。
　
　俺に言わせれば、母さんも勘の鋭い方だと思うけどな……。

　と、密かに苦笑いを浮かべてると

「コッカ―さんもポメ姫も、可哀そうだよね……」

　梨子さんの沈んだ声が聞こえた。

　いつもキラキラとした梨子さんの茶色の瞳は、コッカ―さんの話しを聞いてから、ずっと哀しそうに揺れている。

　そんな彼女が発した、シンプルな「可哀そう」というこの言葉に、みんな共感したらしく、黙り込んでいると

「可哀そうだけど、仕方ないんじゃない」

　真琴さんの、淡々とした口調が室内にやけに響いた。

　梨子さんと違い、悲しそうに沈むことも揺れることもなく、凪いだような真琴さんの黒い瞳は、いつも通りの冷静さを帯びている。

　そんな真琴さんに、ウイスさんは

「仕方ない……ですか」
　　　
　と、興味深そうに言葉を投げた。