「ポメ姫様は私の婚約者だったんですよ」　

　そう言って微笑むコッカ―さんに、俺たちは言葉を失った。

　すぐに言葉を探したけど、気の利いた言葉が何一つ浮かばない。

　母さんと梨子さんも同じらしく、何とも言えない表情を浮かべ、黙り込んでいる。

　そんな俺たちに

「もう随分とむかしのことです。姫様のことはあれでよかったと思っておりますし、どうか、お気になさらず」

　何もかも受け止め悟ったように、コッカーさんは柔らかい笑みを浮かべた。

　その微笑みに、俺は胸が潰れそうになった。　　　

　大切だっただろう。

　誰よりも、守りたかっただろう。

　それが出来なかったことが、悔しくて悔しくて仕方ないだろう……！

　大切な人を失うということを、俺も痛い程知っている。

　未だに、人造人間に殺された悟飯さんのことを思い出すと、怒りと悲しみで全身が震え、悟飯さんを助けられなかった自分の非力さに、悔しくて悔しくて堪らなくなる……！

　俺がもっと強ければ……！

　その後悔を胸に、俺は今までやってきた。

　しかし、コッカ―さんは大切な人の死を受け入れ、あれでよかったのだと微笑んだ。

　いつか俺も、コッカ―さんのように、悟飯さんとの思い出を微笑んで語る日が来るのだろうか？

　四十年という長い年月をかければ、そうなるのだろうか？

　だが、その長い年月の中で、俺は悟飯さんのことを忘れていってしまうような気がした。

　そして、自分を許してしまうのではないかと疑った。

　俺は人造人間との闘いの果てに散っていった悟飯さんを思い出し、ぐっと唇を噛んだ。