紅茶を飲んでいた梨子は、ティーカップから口を離すと、カップを両手に持ったまま、向かいに座るタイツさんの手の中にあるスマホを覗き込み

「あ、そうです。お姉ちゃんです」

　と、軽く頷いた。

　すると、タイツさんはスマホの画面をジーっと見つめたあと

「全然似てないのね」

　と言って、目の前の梨子に黒い目を向けた。

　思い過ごしだろうが、その一言で場の雰囲気が急に静かになった気がした。

　みんなの視線が、一斉にこちらに向けられてる気さえする。

　梨子はどんな顔をしてるんだろ……？

　妙に居心地が悪くなってきた気がして、それを紛らわすように、テーブルの上のティーカップを手に取ると

「私とお姉ちゃんだって似てないじゃない。ベジータだって、兄弟似てないわよ」

　ブルマさんのよく通る声が、同時に横から飛んできた。
　
「アハハ！　まぁ、そうね。歳が離れてるところもそうだけど、私たち姉妹と梨子ちゃん姉妹って似てるわね」

　タイツさんが、ブルマさんのツッコミに納得して笑いながらそう言うと

「あはは。そうですね……」

　って、梨子から乾いた笑いが漏れた。

　ああ。

　もうこの話しはいいだろ。

　話題を変えよう。

　それが自分の役割だと思って、タイツさんの食い付きそうなネタを、頭の引き出しの中から探してると

「でも、私たちは似てなくて当然なんです。……本当の姉妹じゃないんで」

　隣りから思い掛けない言葉が聞こえてきて、私は咄嗟に梨子の方を振り向いていた。