こうして、この家に梨子さんを留めてくれてなければ、俺はきっとタイムパトロールの仕事に集中出来ないだろう。

　！？

　もしかして、母さんは俺がそうなると見越して、梨子さんをこの家でアルバイトさせるようにしたのか……？！

　……いやいや。まさか。

　いくら母さんでも、そこまでは……。

　と否定しつつも、完全には否定しきれず、何となく気不味さを感じながら、コンソメスープの入ったマグカップを持ち上げると

「あ。お料理まだあるので、取りに行って来ますね」

　梨子さんはにこりと微笑むと、ワゴンを押して厨房の方へ行ってしまった。




　しばらくして、湯気が立ち上る料理と、焼きたてのパンの香ばしい匂いを連れて、梨子さんがレストランへ戻って来た。

「お待たせしました！」

　にこにこしながら、テーブルの上に料理やパンの入ったバスケットを並べると

「朝の仕事はこれで終わりらしくて。私もいまから朝ご飯にしていいみたいなんですけど、一緒に食べてもいいですか？」

　梨子さんが首をちょこんと傾げ、聞いてきた。

　その小動物のような可愛らしい仕草に

　いいですかも何も……。
　それは俺が、毎朝望んでることだ。

　そう思い

「ええ！　もちろん！」

　即答すると、梨子さんは

「ありがとうございます！」

　そう言って、嬉しそうに俺の向かいの席に腰を下ろした。

　そして

「今日も美味しそー！　では、いただきます！」

　可愛く手を合わせると、彼女は目の前の料理にフォークを伸ばした。