俺はそう言うと、梨子さんに苦笑いに近い笑顔を向けた。

　梨子さんの気持ちを完璧に理解してるわけじゃないが、掠る程度なら分かる。

　そう思って浮かんだ、苦笑いに近い笑顔だった。

　そんな笑顔を浮かべる俺を、しゅんとした顔で見つめる梨子さんに

「この地球は、やっぱり梨子さんの地球とは違いますから、仕方ありませんよ。梨子さんたちの地球に帰れば、梨子さんはこれからどこでだってアルバイト出来ます。だから、今はここで、メイドの仕事を頑張ってください」

　そう言うと、梨子さんはやはりまだ、少し不満気な表情を残したまま

「そうですね……。せっかくメイドのお仕事をもらったんですから、頑張ります」

　自分を納得させるように、弱い笑顔を見せた。

　不満はあるだろう。

　だが、梨子さんはやはり、異世界から来た人間だ。

　カプセルコーポレーションから一歩外に出れば、きっと、彼女の知らないこの地球での慣習やシステムに戸惑うことがあるだろう。

　それに……！

　街に出てアルバイトを始めたら、そこで新たな人間関係が生まれてしまう。

　もし、その中に男がいたならば、俺は気が気でなくなってしまう……！

　トランクスにでさえ、嫉妬してしまうんだ。

　それが、見ず知らずの男となると、きっとその男に嫉妬して、俺は梨子さんがアルバイトに出掛ける度に、心配で心配で堪らなくなるだろう。

　そのことを思うと、俺は真琴さんと母さんに感謝した。