「え、ええ！」

　と、慌て頷くと

「今日からメイドのバイトをすることにしたんです」

　梨子さんはにこにこと楽しそうな笑顔を見せながら、ワゴンに乗った料理をテーブルに並べ始めた。

　少々ぎこちない手つきの梨子さんに

「バイト、ですか……？」

　何故急に？　そう思い尋ねると

「自由に使えるお金が欲しくて」

　にこにこしいた顔は、すぐに困ったように眉を下げて、そう答えた。

　そんな梨子さんに

「お金、ですか？」

「お金が欲しい」という、梨子さんの意外な答えに驚いてると

「この間、ギターの弦を買いに行った時思ったんです。自分の物くらい、自分で稼いで買わなきゃって……。ここでも、経済的なお世話になりっぱなしになるのは悪いですから……」

　梨子さんは、困ったような……そして、どことなく寂しそうな笑顔でそう言った。

　俺は梨子さんが、この家に……いや、この地球に居づらさのようなものを感じ始めたのかと思い、胸の中が曇っていくのを感じてると

「それに、バイトしてみたかったんです！　私たちの地球に帰ったら、また毎日学校とピアノの練習になっちゃうし。あと、ウチの学校、基本バイト禁止だから、堂々とバイト出来ないですし……！　だから、この地球にいる間にバイトしちゃえ！　って、そう思ったんです」

　梨子さんは、俺の曇った心を晴らすような、眩しい笑顔を浮かべた。

　笑顔もそうだが、アルバイトをしたいという理由が、自分が考えていたことと違っていたことに安心してると