梨子はテンションの高い声で答えた。

　そのテンションの高さに少し引きながら

「バイトって……。何で……？」

　普通に湧いた疑問を尋ねると

「え？　それは、もちろんお金が欲しいからだよ」

　当然でしょ？　みたいな顔をされた。

　何だよ。意外にちゃんとした理由だな……。

　でも、お金が欲しいって……？

　また湧いた疑問に、首を傾げてると

「アレ？　トランクス君、顔どうしたの？！」

　梨子が、パパの拳が直撃した右の頬を覗き込んできた。

「えっ……！？　あ、ああ。別に。何でもないよ」

　大した事じゃないっていうふうに答えると

「あ。ベジータさん……？」

　梨子は見当がついたって感じで、眉をひそめた。

　そして

「ブルマさんから聞いたよ。ベジータさんとトレーニング始めたって……」

　茶色い大きな目が心配そうに俺を見つめてきた。

　いやいや。

　……一体誰のせいで、こんな目に遭ってると思ってんだよ……。

　パパとトレーニングするはめになった原因を、梨子一人に擦り付けてると

「大丈夫？　痛そう……」

　そう言った梨子の右手が、俺の右頬にそっと触れてきた。

　思いも寄らない梨子の行動に、身体が一瞬で熱くなって

「だ、大丈夫だって！」

　俺は慌てて後退りすると、梨子の手を頬から離し

「お、お腹空いたから朝ご飯食べに行くよ」

　そう言うと

「私もこれからレストランで仕事だから、一緒に行こ！」

　明るい声が後ろから付いて来た。