夕食を終えると、私は自室へと戻った。

　時々、ブルマさんに誘われ、リビングでテレビや映画を観たりすることもあるが、大抵は食事の後はすぐに自分の部屋へ戻ることにしている。

　なぜなら。あの、明るく和やかな家族団欒の雰囲気が、今の私には眩し過ぎるのだ。

　あの雰囲気、光景は、いやでもむかしのことを思い出させる。

　四十年経った今でも、私はそれを懐かしい思い出として、心に奥に仕舞い込むとこが出来ずにいた。

　そして、今夜もそのまま部屋へと戻った私は、この旅に出てから書き続けている日記を書くため、机に向かっていた。

　すると、コンコンと部屋のドアをノックする音がした。

　私の部屋に、誰かが訪ねて来ることなど初めてで、驚きつつ「はい」と返事をしてから部屋のドアを開けると、そこには真琴さんが立っていた。

「どうかされましたか？！」

　思いも寄らぬ訪問者に驚いていると

「ちょっと、聞きたいことがあって……」

　真琴さんは黒い瞳を真っ直ぐ私に向けた。

　わざわざ部屋に訪ねて来るくらいだ。

　立ち話しで済むような話しではないと感じた私は

「よろしければ、中へお入り下さい」

　真琴さんを部屋の中へと招き入れた。

　部屋の中央に置かれたソファを真琴さんに勧め、私は机の椅子を真琴さんの方へ向け腰を下ろした。

　少し、固い表情でソファに座った真琴さんに

「この部屋に初めて訪ねて来た方が真琴さんとは……。予想外でした」

　そう笑いを交えてから