「で……これは何だ？」

「何って、卵かけご飯ですけど」

「たまごかけごはん？　見たままだね……」

「まぁ、私たち日本人のソウルフードみたいなもんです」

「ソウルフード？」

「日本人に馴染みの深い料理ってことです」

「この、ただ生卵をかけただけのご飯がねぇ……」

「イヤなら食べなくていいですよ。ただ、私は
梨子みたいに料理出来ないんで、これぐらいしか出せませんから」

　テーブルの上の、卵のかかったご飯を、じとっと疑うような目で見る破壊神にそう言うと

「そう言えば、以前食べられてましたよね？」

　ウイスさんが思い出したように、目の前の卵かけご飯と私を交互に見た。

「そうでした？　まぁ、私、好きでよく食べてるんで」

「ふーん……。真琴さんがお好きということは、味に間違いはないでしょう。では、ビルス様。私、お先にいただきますね」

　ウイスさんは、好奇心に満ちた顔で卵かけご飯を見つめながら、上品に箸を持ち上げた。

「あ、醤油かけてくださいね。量はお好みでそうぞ」

　二人の前に、醤油の入ったビンを差し出すと

「味付けはお醤油だけですか」

　ウイスさんは楽しそうに醤油ビンを持ち上げ、卵かけご飯の上に控えめに垂らした。

「まぁ、塩とかゴマ油とか納豆とか……色々かけてアレンジ出来ますけど、初心者はまず醤油でどうぞ」

「なるほど。シンプルですから色々アレンジ出来るんですね……。それでは、いただきます」

　ウイスさんはニコニコした顔で茶碗を持ち上げると、卵が絡んだご飯を口の中へと持っていった。