一体、何を話せば……？

　記憶の中にある、あの地獄のような世界のことを思い出すのは、決して愉快なものじゃない。

　話しあぐねていると

「未来の悟飯さんて、どんな人だったんですか？」

　促すように、梨子さんが尋ねてきた。

「悟飯さん、ですか？」

「さっき、この世界の悟飯さんとそっくりだったって言ってたじゃないですか？　見た目はそうだと思いますけど、性格っていうか……雰囲気とかどうなのかなって」

「雰囲気、ですか……。そうですね……。やはりこちらの世界の悟飯さんは、表情が豊かで明るかったです。俺の世界の悟飯さんは、あんなふうに心から笑っていなかったように思うので……」

「そうなんですね……」

「でも、母さんと話してる時の悟飯さんは楽しそうでした。悟飯さんにとって、母はむかしの話しが出来る、唯一の存在だったでしょうから」

「そっか……。じゃあ、ブルマさんも嬉しかったでしょうね。みなさんがいなくなってしまって、きっと寂しかったと思うし……」

「ええ……。特に悟空さんの話しをしてる時は楽しそうでした。俺はこの世界に来るまで、悟空さんのことは話しで聞くだけでしたから、実際に会えた時は嬉しかったですよ」

「えっと……悟空さんは病気で亡くなったんでしたっけ？」

「はい、心臓の病気で……。もし、悟空さんが亡くなってなければ、歴史は変わってたかもしれません……」

「悟空さんて、やっぱりスゴイ存在なんですね！」

「ええ。俺も実際会って、母さんの言ってた意味がよく分かりました」

「ブルマさん、何て言ってたんですか？」