すると、俺を見つめていた茶色の瞳がゆっくりと動き、隣りの真琴さんを捉えると

　グゥー……。

　間の抜けたような、空腹を知らせる音が、室内に響いた。

「お腹の音で返事するな」

　呆れながら真琴さんがツッコむと、少し間を置いてから

「……お腹空いた……」

　弱々しい声が返ってきた。

　確かに、まる一日何も食べずにピアノを弾いていたんだ。

　当然だろう。

　そう思って

「何か食べますか？」

　梨子さんに尋ねると

「食べるより、先に寝な」

　半分命令に近い声が、梨子さんから選択する権利を奪った。

「……ヤダ。何か食べたい……」

「急に食べると胃に悪いって」

「お腹空き過ぎて寝れない……」

　引き下がらない梨子さんに、真琴さんは、ハァ……と小さく溜息を吐くと

「じゃあ、何か胃に優しそうなもの作ってもらって来るから」

　そう言うと

「ちょっと行って来ます」

　チラッと、圧をかけるような目で俺を見てから、部屋を出て行った。

　いつも梨子さんに対して冷ややかな真琴さんだけど、実は梨子さんに甘いんだな。

　二人の関係を微笑ましく思っていると「あの……」か細い声が聞こえてきた。

　視線を下げると

「トランクスさんが、部屋まで、連れて来てくれたんですか……？」

　トロンとした眠そうな顔が、俺を見上げていた。

　いつになく、無防備な梨子さんにドキリとしながら「え、ええ」と、小さく頷くと