「えっ？！　べ、別に何でもないよ！　ちょっと聞いてみたかっただけ！！」

　そう答える梨子は、明らかに動揺してた。

　コイツ、隠し事出来ないタイプだな……。

　分かりやす過ぎる梨子に呆れながら

「ま、男っていっても色々いるからな。誰とでも出来るってヤツもいれば、そうじゃないヤツもいるし。って言うかさ、これは男に限らず女の子もそうだろ？」

「男」で一括りにされることにちょっとムカついて、反論の意味も込めて言うと

「でも……男の人の方がそういう人多いでしょ？」

　梨子がしゅんとした顔で返してきた。

　何を根拠に言ってんだ？

　梨子の発言にイラッとしながらも

　でも……まぁ、確かに。男の方がそういう欲は……強いかもしれないけど。

　なんて、少し弱気になってると、梨子が深い溜息を吐いた。

　沈んだ表情で、どこか遠くを見つめる梨子の横顔に、ゆらゆらと心が揺れるのを感じながら

「……梨子はどうなんだよ。キスしたことあんの？」
　
　何気なくを装って聞くと、梨子は身体をビクリとさせて「へっ？！」って変な声を出した。

　いつも以上に過剰な反応を見せる梨子に、密かに眉を寄せてると

「あ、あるよ……」

　躊躇う声が聞こえてきて、俺は思わず「え……」って気の抜けたような声を漏らしてしまった。

　梨子にはそういう経験がないと決め込んでた俺は、指先を唇に当て、顔を赤くする梨子の横顔を、複雑な気持ちで見つめてた。