ドラゴンボール！

　その手があったか……！

　母さんのアイディアにその時は感心したが、自分がこの世界の人間じゃないことを思い出すと、急に虚しくなった。

　もし、その願いが叶えられたとしても、結局俺は梨子さんに会えなくなる。

　今回は、時の界王神様の言い付けでこの世界に関わってはいるが、本来俺はこの世界の歴史に関わることが出来ない。

　この世界に居られるのは今だけ……。

　どうあがいても、梨子さんと過ごす時間は今しかない。

　夕食後、腹ごなし……というよりは、落ち込む自分を誤魔化すように、庭の奥にある木々に囲まれた場所で、所謂イメージトレーニングをはじめた。

　気を高め、ミラと対峙している場面をイメージして、拳と足技を繰り出していく。

　この世界で、父さんや悟空さんと修行出来たお陰で、更に強くなったという自信があった。

　最強の二人に稽古をつけてもらったんだ。

　当然のことだ。

　そう思いながら、イメージの中のミラの攻撃をかわしていく。

　最後は、ミラの鳩尾に拳をめり込ませヤツが崩れ落ちたところで、頭の中にあるイメージのスイッチを切った。

　ふぅ。

　と息を吐き、心身共にスッキリした自分に

　さぁ、部屋に戻るか。

　と心の中で呟き、家の方へ戻ろうとした時だった。

　少し離れた場所から声が聞こえてきたような気がして、思わず立ち止まった。

　耳を澄まし、その声の正体を探っていると、それは間違いなく梨子さんの歌声で、それが分かると、俺の足は自然と声のする方へと向かっていた。