梨子さんが第六宇宙の地球に帰るかもしれない。

　母さんからそう聞いた時、胸をえぐられるような衝撃を受けた。

　そしてその時から、胸の奥はぐるぐるぐるぐると黒い渦を巻き、俺を苦しめていく。

「地球に帰りたいですか？」

　まさか自分の問い掛けで、己の首を絞めるようなことになるなんて思ってもなかった。

　余計なことを言ってしまった自分を恨みながらも

　いつか来る日が早まっただけだ……。

　頭の片隅でそう囁く声が聞こえ、覚悟を決めざるを得ない時がきたのだと、自分に言い聞かせていた。

　何もする気が起きず、ベッドに寝転がり白い天井をぼんやり見つめていると、さっき母さんに言われた

「ケジメつけなさいよ！」

　という言葉を思い出した。

　俺の梨子さんに対する「ケジメ」。

　それは自分の想いを梨子さんに伝えることを意味しているんだろう。

　しかし。

　伝えたところで、梨子さんが俺の想いに応えてくれるのだろか？

　伝えたところで、彼女を困らせてしまうだけなんじゃないだろうか？

　そう思うと、やはり想いを彼女に伝えるのはやめておいた方がいい気がした。

　もし。

　もし、彼女が応えてくれたとしても、そもそも住む世界が違うのだから、結局離れてしまうことになる。

　そうなった時、辛さは更に増す。

　だから。

　だから、この気持ちは伝えない方がいい。

　梨子さんの笑顔を思い出しながら深く溜息を吐くと、ゴロリとベッドにうつ伏せになり、枕に顔を沈めた。