彼女を見送った後、自室にとあてがわれたゲストルームへ戻った俺は、シャワーで汗を流しながら、梨子さんが演奏会へ行く人物が、ビーデルさんだけだと聞いて安心していた。

　もし、そこに悟飯さんが加わわるのなら、俺は悟飯さんに嫉妬したに違いない。

　悟飯さんにまで、そんな感情を持ちはじめそうになる自分に

　何を考えてるんだ、俺は……！

　と呆れながら、栓を捻りシャワーを止めた。

　モンスター島に二人で行って以来、梨子さんとは、更によく話しをするようになった。

　それは、俺が梨子さんの近くにいるようにしているからなのだが、梨子さんはそのことに気付いているのだろうか？

　母さんやトランクス曰く、俺の梨子さんに対する態度は分かりやす過ぎるらしいのだが、梨子さんはどうなのだろう？

　俺の気持ちに気付いているのだろうか？

　一緒にモンスター島に行ったわけだし、嫌われてはない。と思うのだが……。

　でも。

　彼女はトランクスの部屋に、よく出入りしているし……。

　その話しを彼女から聞くたびに、俺の胸の中は、急にモヤモヤし焦り始めるのだった。

　でも、こんなことを誰にも話すことは出来ず、俺は時々自分の想いを梨子さんにぶつけたくなった。

　だが、そのたびにグッと我慢し、真心を吐き出してしまわないように耐えた。

　もし言ってしまえば、いまのこの関係が壊れてしまう。

　そう思ったからだ。

　それは、いままで経験した恐怖とは、まったくの別の恐怖だった。