隣りを歩く真琴を見ると「まぁね」って答えが返ってきた。

　少し口角を上げて、微笑む横顔を見て

　まぁ、言い出せなかった梨子の気持ちも分からなくもないな……。

　そう思った。

　自分にも他人にも厳しい真琴に「夢を諦める」なんて言ったら、くどくど詰られそうだ。

　しかも、他にも色々ダメ出しされそうで、心が折れそうな気がする。

　こんな幼馴染がいたら厄介だっただろうな……。

　なんて、梨子に同情しながらも、梨子の性格からすれば、真琴みたいなしっかりしたヤツが近くにいたから、やってこれたのかもしれないな。

　って、納得してると

「でも、私はあの子の夢諦めてないけどね。私はあの子ならプロのピアニストになれるって思ってるから」

　真琴は自信に満ちた声で、ハッキリそう言った。

　そんな真琴の発言に驚いた。

　いつも梨子を小馬鹿にしてるけど、真琴が梨子のピアノの才能を一番信じてるんだって、この時分かった。

　何だよ……！

　もしかして、こいつ……めちゃくちゃいいヤツなんじゃないのか？！

　これまで俺の中でつくりあげられた、真琴のイメージが崩れていくのを感じてると
　
「梨子がピアニストを目指してるおかげで、私も剣道頑張ってこれたからね。今度は私が、またあの子がピアニストになりたいって思えるように頑張ってみせるよ」

　そんな、決心の言葉が聞こえてきた。