重力室でのトレーニングを終え、自分の部屋へと戻る途中、偶然梨子さんたちに出くわした。

　ピンク色のワンピースに、纏められた髪。

　まるで、童話の中に出てくる妖精のような梨子さんの姿に、俺は思わず見惚れてしまった。

　そんな華やかな彼女に見惚れていると、ふと居心地の悪い視線を感じた。

　視線を感じる方を見ると、ニヤニヤと口元を緩めた母さんと目が合い、ビクリとする俺に

「どう、重力室でのトレーニングは？」

　面白いものでも見るような顔で、母さんが尋ねてきた。

「え、ええ。戦闘プログラムが充実していて、一人でも十分鍛えることが出来るので、とても気に入りました」

　揺さぶりをかけてくる視線を、何とかかわして答えると

「そう、それならよかったわ！　ま、何てたって、私とパパが共同で開発してるんだから、スゴイのは当然だけどね！」

　母さんの顔は、ニヤニヤからにんまりとした得意気な顔へと変わった。

　落ち着かない笑顔から解放され、ホッと胸を撫で下ろしてると

「あ、こんなとこで話してる場合じゃないわね。そろそろビーデルが来る頃だから行きましょうか」

　急ぐ素振りを見せる母さんに「はい」と頷く梨子さんに

「あの……何処かへ出掛けるんですか？」

　一人だけ、よそ行きの姿の梨子さんを、不思議に思い聞くと、夕方からサタンシティで、オーケストラの演奏会があるということだった。

　とても楽しみにしているのだろう。

　梨子さんの笑顔は、いつも以上に輝いていた。