しかし、梨子さんのことを思うと、俺のこの我儘な想いには蓋をしなければいけない……！

　そんな葛藤をしていると

「トランクス君……どうかしたのかい？」　

　前から歩いて来ていたらしいブリーフ博士……もとい、祖父に声をかけられた。

「お、おじいさん……！　い、いえ……。何でもありません……」

　慌てて取り繕うように表情を緩めると

「そうかい？　険しい顔をしていたようだけど……」

　祖父は不思議そうに俺を見つめてから

「ああ、そうだ。これから何か用事はあるかね？」

　と、尋ねてきた。

「い、いえ。特にありませんが……」

　マグカップ片手に佇む祖父にそう答えると

「それじゃあ、すまないけど、少し手伝って欲しいことがあるんだ」

　祖父はにこりと微笑むと、廊下を進みはじめた。



　祖父に連れられてやって来たのは、高い天窓から午後の陽射しが降り注ぐ中庭だった。

　陽射しを浴びた木々や芝生はキラキラと輝いていて、その中を歩いていると心が次第に落ち着いてくる。

　先程の葛藤から少し解放され、祖父について中庭を歩いていると、祖父は中庭に置いてある白いガーデンテーブルの傍で立ち止まった。

　そして、持っていたマグカップをガーデンテーブルに置くと、次に白衣のポケットからカプセルを一つ取り出し、それを投げた。

　ボン！　という音と、白い煙と共に現れたのは『ＣＡＴＦООＤ』と書かれた袋と、果物の山だった。

　出てきた物を見て、ポカンとしていると

「みんなの食事の時間でね。よろしく頼むよ」

　祖父から、水色のフードボウルを手渡された。