「分からない？　そうなの？」

「いい演奏かは先生が評価するんで、本人にも分かんないんですよ。この地球には、梨子が弾いてる曲を評価出来る先生はいませんから」

「ああ、なるほどね……って。それじゃあ、いくら練習したって自己満足ってこと？！」

「まぁ、そうですね」

「って言うか、いい演奏かを決めるのって、聴いた人それぞれじゃないの？」

　不思議に思って聞くと

「そうだと思うんですけど……。梨子が弾いてる『クラシック』っていうジャンルは作曲者がどういう想いでその曲をつくったのかを想像して再現する音楽なんで、他の音楽みたいに自由に！　ってわけにはいかないみたいなんですよねぇ……」

　真琴ちゃんは難しい顔で、そう答えた。

　その答えに

「そうなんですか……」

　トランクスが驚いたような声を漏らすと

「だから、その曲が出来た背景を知っておかないといけないし、作曲者の気持ちを想像して表現出来なきゃいけないし……。ただ楽譜通り弾ければいいってもんじゃないんですよね」

　真琴ちゃんが溜息交じりに言うと

「梨子のヤツ、何だか難しいことやってんだなぁ」

　って孫君が感心するように言った。

「ホントね。音楽って自由に演奏出来るものだと思ってたけど……。『クラシック』って窮屈そうね。この地球の『クラシック』もそうなのかしら？」

　あまり聴いたことはないけど、この地球にもある『クラシック音楽』のことを思い浮かべた。

　どう想ってつくられたかなんて……そんな正解のない作業をするなんて私には無理だわ……。