「梨子も苦労してるっちゅーことだな」

　悟空さんはそう言って笑うと

「よし！　じゃあ、梨子も呼んでやっか！」

　梨子の気を捉えたらしく、ピアノの音がする方に向かって歩きだした。

　


「「いただきまーす！」」

　悟空さんと梨子は満面の笑みで手を合わせると、すぐさま運ばれてきた料理へと手を伸ばした。

「うめぇ！」

「おいしー！」

　目の前で、満足そうに料理を頬張る二人を見ながら、私も自分の皿の上に酢豚や炒飯、唐揚げをのせた。

　艶のある中華餡が絡んだ酢豚は確かに美味しくて、モグモグと食べ進めてると

「梨子は修行の方はどうだ？」

　ラーメン鉢から大量の麺を箸で持ち上げながら、悟空さんが尋ねた。

　やっぱ、悟空さんにはピアノの練習も修行みたいなもんなんだな。

　なんて、自分の思った通りだったことを可笑しく思ってると

「……どうだろ？　分かんないです」

　梨子は首を傾げながらヘラッと笑うと、シュウマイをパクリと口の中に入れた。

　そんな梨子に

「分かんないって……。じゃあ、あとで聴くよ」

　久し振りだし、聴いてやろうじゃないか。

　そう思って、観客を買って出ると

「いいよ。マコちゃんじゃ分かんないし」
　
　鼻で笑うような返事が返ってきて、少しカチンときた。

「分かんないって何？」

　炒飯を食べようとしてた手を止め、梨子を睨むように見ると

「だって、マコちゃんは先生じゃないじゃん」