庭での修行を中断し、悟空さんと二人、休憩がてら少し早めの昼食を食べにレストランへ向かってると、ピアノの音が聴こえてきた。

　最近は、ブルマさんの研究室の近くにある防音室でピアノを弾いてるから、梨子のピアノを聴くのは久しぶりだ。

　ブルマさんにリクエストされたのか、ただの気まぐれか……今日はどこか別の部屋でピアノを弾いてるらしい。

　足を進めるごとに近づいてくるピアノの音に、耳を澄ませてると

「梨子のヤツもやってんなー」

　隣りを歩く悟空さんが、楽しそうに言った。

　梨子のピアノの練習も、悟空さんからしてみれば修行みたいに思うんだろうか？

　そんなことを思ってると

　ジャーーーン！！！

　と、鍵盤を全部の指で強く押さえ付けたらしい、暴力的な音が聴こえてきた。

「？！　どうしたんだ、梨子のヤツ？」

　突然の荒々しい音に驚く悟空さんに

「ああ、うまくピアノが弾けてないみたいです」

　そう答えると、悟空さんは「そうなんか？」って、目を大きくして聞いてきた。

「梨子はうまく弾けなくなってくると、イライラして、ああやってピアノに当たるんですよ」

　そう説明すると

「へぇ。梨子のヤツも、イライラしたりするんだなー」

　悟空さんは意外そうな声を出した。

　そう。

　梨子はピアノが思うように弾けないと、ああやって負の感情をあからさまに表に出す。

　そして誰もが、いつもフワフワニコニコしてる梨子の、この意外な一面を知って驚く。