演奏会は夕方からってことで、ビーデルがウチに梨子ちゃんを迎えに来たのは、お昼を過ぎた頃だった。

「梨子ちゃん、急にゴメンナサイね」

　申し訳なさそうに謝るビーデルに

「いいえ！　私の方こそ誘って頂いてありがとうございます！」

　梨子ちゃんは嬉しそうに首を振った。

「それじゃあ、梨子ちゃんお借りしますね」

　そう言うと、二人はビーデルの乗って来た飛行機で、サタンシティへと飛び立って行った。
　


「ねぇ、真琴ちゃんて意外と器用なのね」

「え？」

「ほら、梨子ちゃんの髪！　あのアレンジすごく可愛かったわよ」

　やるじゃないって感じで笑いかけると、キョトンとしてた顔は「ああ」って相槌を打つと

「梨子のピアノの発表会の時とか、私が梨子の髪担当だったんで」

　何でもないことだってふうに、真琴ちゃんは答えた。

　やる前は面倒臭そうにしてたけど、終わってみれば、ちゃんと可愛く仕上げてるあたりに、梨子ちゃんてば、実は几帳面な性格なのね。と微笑ましく思った。

　そして、何だかんだ言っても、梨子ちゃんのことが好きなのね。そうも思った。

　そして「好き」と言えば……。

　ついさっきのことを思い出して、フフッて笑いがこみ上げてきた。

　こっちに「？」ってふうな顔を向けた真琴ちゃんに

「ねぇ、さっきのトランクスの顔！　見た？」

　笑いを我慢しながら聞くと、すぐに「ああ」って、返事が返ってきた。