あと数センチで恋?①

夢小説設定

この小説の夢小説設定
主人公
主人公の苗字
主人公の幼馴染(女の子)
主人公の幼馴染(女の子)の苗字
主人公の幼馴染(女の子)呼び方

 こうして楽譜を眺めて、どれくらい経ったんだろ?

 ふと壁にかけてある白い円形の時計を見ると、十時を少し回ってた。

 夜ご飯を食べて、少ししてからこのピアノ部屋に来たから――。

 二時間近く、こうして楽譜を眺めてたんだ。

 それに気が付くと、思わず小さく息を吐いてた。

 ずっと集中出来てたかは怪しいけど、二時間も楽譜を読んでたのは久しぶりだった。

 最近は、ピアノを弾くことばかりしてたから。

 ピアノは……ううん。ピアノだけじゃなくて、他の楽器もそうだと思うけど、テクニックだけじゃダメなんだよね。

 楽譜から「作曲者がどんな思いを込めてこの曲を作ったか」を自分なりに想像出来ないと。

 その想像したものを、自分の中で温めながら演奏していくうちに、どんどん心のこもったいい演奏になっていく。

 だから、ただ譜面通りピアノを弾けるだけじゃ評価されない。

 そこに、自分の心を込めないと、認められないんだよね……。

 だから、楽譜を読むことは大事。

 世界で活躍してる。これから活躍する。っていうピアニストの中には、平気で五・六時間譜面を読んでる人もいる。

 それを思えば、二時間譜面を読んでただけで満足してる自分は、まだまだだなぁって思う。

 目の前のショパン『バラード第二番』の楽譜を一度ぼんやり見つめてから、私は気持ちを引き締めると、鍵盤に指をのせた。



 『バラード第二番』の演奏時間は、大体七分四十秒くらい。

 前半は穏やかな、緑が広がる田園風景を思わせるテーマ。

 そして、途中は激しい嵐みたいなテーマになる、面白い曲。
1/5ページ
スキ