緩んだ顔のトランクスさんを見て

　へぇ。この人もこんな顔するんだ。

　と、意外に思った。

　いつも真面目で爽やかで凛々しくて。

　生真面目な面しか知らなかったけど、やっぱり嬉しいことがあると、こういう表情もするんだな。と感心した。

　トランクスさんが育った環境を思うと「ゆとり」ってもんがなかっただろうから、こういう緩い顔は出来ないんじゃないかと勝手に思ってた。

　何だろ……。

　心の表情？　っていうのかな……。

　それが、私たち平和な世界で育ってきた人間よりかは、やっぱり乏しいんじゃないかと思ってた。

　いまみたいな緩んだ表情なんか出来ないんじゃないかと思ってたけど、そうでもないことに少し安心した。

　でも、その緩んだ表情の原因を思うと複雑になった。

「今日も、梨子との朝ご飯は美味しかったですか？」

　誘導尋問のように、慌てて引き締めた顔に尋ねると

「え、えぇ……。まぁ……」

　引き締まった顔は、すぐにたじろいだ顔へと変わった。

　やっぱ当たりか……。

　当たった推察に、密かに溜息が出た。

　トランクスさんの顔を緩ませることが出来る、唯一の存在が梨子だってことを改めて実感し、虚しくなる。

　梨子は、あんたのこと何とも思っちゃいないんだよ……。

　そんな乾いた心で、絶賛片想い中の人物を見つめてると、ふと

　……いっそ、止めを刺された方がいいんじゃないか。

　そんな考えが頭を過り

「っていうか。もう告っちゃえばどうですか？」

　たじろぐイケメンに、そうけしかけていた。