あんなにあっさり、梨子さんと夜景を見に行く約束を取りつけられるとは思わなかった。

　……夜景が見れるなら、誰でもよかったということなんだろうか……。

　そんな哀しい疑問がふと湧いたが、すぐに彼女と二人で出掛ける約束が出来た嬉しさで、その疑問に蓋をした。

　とにかく、梨子さんと二人きりで出掛けるチャンスが巡ってきたんだ！

　この機会に、また彼女との仲を深めることが出来るかもしれない……！

　そんなことを考え、頬のあたりの筋肉を緩めながら、自室へと続く廊下を歩いてると、目の前に怪訝な顔をした真琴さんが立っていた。

「お、おはようございます！」

　緩んでいた脳と顔を慌てて引き締めると

「……トランクスさんも、そんな顔するんですね」
　
　真琴さんは、意外そうな顔を俺に向けた。

「そ、そんな顔……？」

　真琴さんの言った言葉に、疑問符をつけ繰り返すと

「いや……いまみたいなだらしない顔もするんだなって」

　真琴さんは意外そうな顔を、すぐに呆れた顔へと変えた。

「そ、そんな顔してましたか……？」

　自覚はあったが、気付いてないフリをして誤魔化すと

「今日も梨子との朝ご飯は美味しかったですか？」

　と、冷めた目が俺をじとりと見つめていた。

「え、えぇ……。まぁ……」

　黒く光る眼に、たじろぎながら頷くと

「そうですか……」

　真琴さんは溜息を吐くようにそう言うと

「っていうか。もう告っちゃえばどうですか？」

　と続けた。