だから、こうして梨子さんの片付けを手伝うのは当然だった。

　テーブルの片付けを終えると

「ありがとうございました！　お皿運んだら、朝食の準備しますから待ってて下さいね！」

　梨子さんはそう言うと、ワゴンを押して厨房の方へ入って行った。



　
「美味しい……！」

　幸せそうに朝食を食べる梨子さんを見ると、今日も幸せな気持ちになる。

　彼女の笑顔は俺を……いや、見た人みんなを幸せにする。

　梨子さんの笑顔は、嘘のない、心の底から溢れてくる笑顔だった。

　だから、本来ならば暗いはずの彼女の生い立ちを知っても、みんな今までと同じように、態度を変えることなく彼女と接することが出来るんだろう。

　そして、彼女自身も、自分の生い立ちを明かして、変わることがなかった。

　そんな梨子さんを見て、彼女の生い立ちに、少しでも同情してしまった自分を恥ずかしく思った。

「私の家族は本当にいい家族だよ！　私の自慢の家族だもん！」

　梨子さんが誇らしそうに言った言葉で、彼女がいい人たちに囲まれ、素晴らしい環境で育ち、心から笑顔になれる理由に納得した。

　俺は、梨子さんの話しによく登場する、彼女の家族に、こんな素敵な笑顔が出来る人間に育ててくれたことを感謝し、礼を言いたいとさえ思った。

　それぐらい、俺は梨子さんの笑顔に救われていた。

　そして、その笑顔を俺だけに向けて欲しいという願望が、日に日に増してきていた。

　しかし……。