トランクスに抱えられている梨子さんを見て、ショックを受けた。

　二人の距離が物理的なだけじゃなく、心までも近いことを見せつけられた気がして、胸の中に嫌な感情がふつふつと湧き出してくる。

　この嫌な感情を悟られないよう、心を落ち着かせていると

「トランクスさん、おかえりなさい！」

　梨子さんが無邪気な笑顔を向けてきた。

　夜の暗がりの中でも分かる、可愛いらしい笑顔に

「た、ただいま……！」

　と返すと、胸の中から湧き出しつつあった黒い感情がスッと霧散するのが分かった。

　梨子さんの笑顔一つで、すぐに心が変化した自分を

　現金なヤツだな……。

　そう思い呆れていると

「悟飯さんたちお元気でしたか？」

　ニコニコした笑顔が尋ねてきた。

「え、ええ。奥さんもお子さんも……それに、サタンさんもお元気そうでした」

「そうなんですね！　あー、私も会いたかったなー……」

「ビーデルさんも、梨子さんと真琴さんに会いたがってましたよ」

　ビーデルさんの顔を思い出して、そう伝えると

「ホントですか！　じゃあ、次は私たちも一緒に行きたいです！」

　笑顔がいっそう輝いた。

「ええ。じゃあ、今度は一緒に行きましょう」

　つられるように笑顔を浮かべると、梨子さんは満面の笑顔で「はい！」と頷いた。

　そんな短い二人だけの会話に満足して、湧き出してた黒い感情のことなど忘れていると

「ねぇ。そろそろ家に入っていい？」
　
　トランクスの呆れたような声が聞こえてきた。