タイミングが悪い……。

　いや、悪すぎる……！
　
　俺はそんなことを思いながら、梨子を抱えて西の都の空を飛んでいた。

　昼間から続いてる、この持って行き場のない悶々とした気持ちを抱えたまま、こうして梨子を抱えて飛んでるのは正直キツイ……。

　いくら梨子とはいえ、やっぱり女の子だ。

　妙にいい匂いはするし、抱えてる両手からは柔らかい感触がイヤッてくらい伝わってくる……！

　ああ……。最悪だ……。

　げんなりしながら視線を横に向けると、茶色い大きな目と目が合って、ドキッとした。

　動揺してるのを悟られないように、何もないみたいに視線を逸らして下を見れば……膨らんだ胸元の近さに身体がピクリと反応しそうになった。

　っ！　マズイマズイ……！！

　溢れそうになる煩悩を飲み込むように、何度も呟いてると

「夜の西の都って、すっごくキレイだねー！」

　って、テンションの高い声が聞こえて来た。

　眩しいくらいのネオンで輝く都の姿を初めて見たらしく、梨子は表情を輝かせて

「トランクス君、連れて来てくれてありがとう！」

　本当に嬉しそうに、俺の顔を見つめて言ってきた。

　その屈託のない笑顔を見た時、梨子の身の上話しを聞いたばかりのママが

「梨子ちゃんはいい子に育ってるわ。そうじゃないと、あんな笑顔出来ないもの」

　って、言ってたのを思い出した。

　その言葉を思い出した途端、俺の心に影が出来て、悶々としてた気持ちがスーッと萎えていくのが分かった。