梨子を抱え上げ、空にいる悟空さんのところへ向かう途中、梨子の顔をチラリと見ると、梨子は名残惜しそうに地上を見つめていて、その表情に何故か胸が疼いた。

「足、痛むか？」

　胸の疼きを紛らわすように、気になっていた両足の怪我のことを聞くと

「うん……ちょっと。爆風で飛ばされた時に出来たみたい。こんな怪我したことなかったから、見た時ビックリしちゃった！」

　梨子は気を遣わせないようにか、笑顔で答えた。

　それを聞いて「そっか……」と、俺は一先ず安心したよう装ってから

「あいつ等にやられたんじゃないんだな」

　お兄ちゃんに倒されてた二人を指して聞くと

「え？！　あ、うん……」

　梨子はバツ悪そうに俯いてから、すぐに顔を上げ

「危ないとこだったけど、トランクスさんが助けてくれたから！」

　ヘラッと微笑んで答えた。

　そのヘラッと笑う顔を見て、それがいつもの能天気な笑顔とは違うことはすぐに分かった。

　何があった……？

　知りたいけど、何だか聞いちゃいけない気がして

「よかったよ、お兄ちゃんが間に合って」

　梨子の能天気に合わせて、軽く言うと
「うん……」って、上の空な返事が返ってきた。

　見ると、梨子はまた、地上を名残惜しそうに見つめてて

「どうかしたのか？」

　気になって、堪らずに聞くと

「……せっかく買ったお土産、なくしちゃった……」

　梨子は後ろめたそうに呟いたけど、名残惜しむその目は、なくした物に対してだけじゃない気がした。