いいアイディアだと頷いてると

「フフ。トランクスさんは真面目な方ですねぇ。ビルス様も少し見習って欲しいくらいですよ」

　ウイスさんは小さく笑ってから

「でも、トランクスさん。あまり真面目過ぎるのも考えものですよ。時々は肩の力を抜いて、自分の心に正直なることも必要です」　

　と、微笑んだ。

　その微笑む顔を不思議に思っていると

「たとえそれが間違ったことだったとしても、後悔する必要はありません。それも一つの経験。無駄なことではないんですから」

　ウイスさんは、にんまりと意味深な笑顔を浮かべた。

　その顔にギクリとしていると「では、私はこれで……」立ち去ろうとするウイスさんは「ああ、そうそう」と何か思い出したように立ち止まると、こちらを振り返り

「お元気になられたようで、梨子さんはいつものようにメイドのお仕事をされてましたよ。よかったですねぇ」

　涼しい笑顔を浮かべてから、歩いて行ってしまった。

　何もかも見透かしているような笑顔に、俺は全身が火照っていくのを感じると、もうトレーニングをする気分ではなくなっていた。
　

　

　さっきのウイスさんの言葉で、レストランに行くのが怖くなった。

　時間はすでに九時を回っていて、梨子さんの仕事が終わる十時まで、あと三十分少ししかない。

　レストランに行けば彼女がいる。

　気まずいが、会わなくてはいけない……！

　あの夜のことを謝り……そして、想いを伝えなくては……！

　心の準備をして、レストランに入ろうとすると、何故か今日に限って母さんが遅めの朝食をとっていた。