下りた場所はどうやらオフィス街らしく、スーツや制服姿の人たちが、叫びながら右往左往と避難していた。

　黒煙が上がっているのが見えたから、すでに攻撃を受けたんだろう。

　街全体がパニックに陥っているようだった。

　人って、パニックになると本当にこんなふうになるんだな……。

　パニック映画でよく見る、逃げ惑う大衆の姿を、感心しながら見ていると

「真琴さん、とりあえずここでようすを見ましょう」

　トランクスさんの落ち着いた声が聞こえてきた。

　こういう状況に慣れてるのか、いつも通りのトランクスさんに「分かりました」そう小さく頷いた私に

「真琴さんは動じませんね」

　トランクスさんは苦笑いを浮かべた。

　は？　何言ってんだこの人……。動じるも何も、そういう次元超えてんだよ……！

　そんなことを思いながら、ジロッと、隣りに立つトランクスさんを見上げ

「この状況に、ただ呆気にとられてるだけです」

　正直に答えると

「そうですか。いえ、予想通りの状況なので、動揺されるかと思ったんですが……。安心しました」

　トランクスさんはそう言って、ホッとしたように微笑んだ。

「この地球に来た時点で充分動揺したので、もう多少のことじゃ動じませんよ」

　逃げ惑う人達を横目にそう言うと

「真琴さんは、俺たちが思っている以上に強いですね」

　感心するような声がした。

「やっぱり連れて来なきゃよかった。って言われたくないですから」

　そう自分に言い聞かせるように言った直後、上空から衝撃音が聞こえてきた。