視線を下に落とすと、私がいない間に起こったことを話してくれた。



「そうですか。想いを伝えられたのですね」

「はい……。結果は分かってはいたことなので、納得していたのですが……。その後に、梨子さんには好きな相手がいることを知りまして……」

「ほぉ……。梨子さんに」

「ええ。それで、その相手というのが……もう一人の俺でして……」

「もう一人の？」

「はい。俺がこの世界に来る前に、俺の世界とはまた別の世界に住む俺が、タイムマシンでこの世界に来ていたんです」

「何と……！」

「その俺のことを梨子さんは好きだそうで……。とても、複雑なんです」

　苦笑いを浮かべるトランクスさんからは、少しばかり悔しさのような、何とも言い表し難い感情が滲み出でいるように感じた。

　無理もない。

　もう一人の自分が恋敵とは……。

　そんなことが有り得るのかと、突拍子もない展開が信じられず、唖然としていると

「ふぅ。誰かに話すことが出来て気持ちが楽になりました」

　トランクスさんのスッキリとした声が廊下に響いた。

　その声にハッとして

「いえ……。聞くことしか出来ず、申し訳ない」

　頭を下げると

「いえ。聞いてもらえただけで十分です。こちらこそ、こんな話しをしてしまって申し訳ありません……」

　トランクスさんは深く頭を下げた。

「好青年」

　そう呼ぶに相応しい彼と梨子さんは、お似合いの二人だと思っていた。

　しかし、現実とは残酷なものだ。

　私はこの青年の幸せを、願わずにはいられなかった。