「えーっ！　よくないよ！　会ってみたかったのにー！」　

　梨子は口を尖らせ、不満そうに俺を見上げてきた。

　好きな相手の彼女に「会いたい」なんて、どういう心理だよ……？

　？！　

　もしかして、梨子はマイちゃんに会うことで、俺を諦めようとしてるのか？！

　俺のことが好きらしい、梨子の心理を探ってると
　
「あーあ。トランクス君の彼女に会えなかったのが、唯一の心残りだなー」

　梨子は心の底から、残念そうな声を出した。

「……そんなに会いたかったのか？」

　梨子の、俺への想いを諦めようとする健気さに胸を打たれ、梨子の顔に視線を落とすと、その目には涙が浮かんでてビクリとした。

　梨子の泣き顔に、どうしていいか分からず動揺してると

「私……帰りたいけど……帰りたくない……。も、もっと……この地球にいたいよぉ……」

　梨子は、震える声でそう言った。

　今日一日、梨子が無理に明るく振舞ってるのは、何となく分かってた。

　言いたくても、誰にもこの本音は言えなかったんだろう。

　そう思うと、俺の胸も苦しくなってきて、俺は飛ぶのを止め、夜の空に立ち止まってた。

　そして、涙を零す梨子に

「大丈夫だって。絶対また会えるからさ、泣くなって！」

　そう言って、抱えた梨子を抱き締めると、梨子は俺の胸に縋りつき、俺の言葉が実現するのを願うように

「うん……うん……！」

　嗚咽を漏らし、繰り返した。