『私、好きな人がいて……』

　さっき、中庭で言われたその言葉が、虚しく胸に響いていた。

『ゴメンナサイ』

　という言葉以上にショックが大きく、彼女の心が他の誰かにあることを思い知らされた。

　彼女の「好きな人」とは一体誰だろう……。

　ぼんやり考えるが、思い当たるのはやはりこの世界のトランクスしかいなかった。

　ああ。やっぱり、梨子さんはトランクスのことが好きなのか……。

　真琴さんは違うと言って笑っていたが、やはり梨子さんの「好きな人」というのはトランクスで間違いない気がした。

　二人が仲良く並んで歩いている姿や、トランクスの部屋から出てくる笑顔の梨子さんを思い出すと、そうとしか思えない。

　のだが……

　いや。

　待てよ……。

　以前、トランクスが「彼女がいる」と言っていたことを思い出し、ハッとした。

　梨子さんも、俺と同じなのか……？

　俺と同じように、受け入れてもらえない想いを胸に秘めているのか……？

　そんなことを思いながら、ゆっくりとした足取りで部屋に向かって歩いていると

「……トランクスさん？」

　真琴さんが、怪訝そうな顔を浮かべて立っていた。




「梨子のヤツ、トランクスさんに何て言ったんですか？」

「え？　ああ……ゴメンナサイと」

「……へぇ。で、やっぱショックですか？」

　淡々と聞いてくる真琴さんに

「いえ。分かってはいたことだったので」

　と苦笑いしながら