テーブルに置き去りにされた、肉や野菜をつまみながら、私はバーベキューコンロを囲む、梨子とトランクスを眺めていた。

　私がわざわざ持って来てやった肉たちよりも、梨子に肉を焼いてやることを選んだトランクスに舌打ちしたが、ヤツの取った行動には好感を持った。

　トランクスは、梨子のことが好きだ。

　その好きが「恋愛」の好きなのかどうかは分からないが、トランクスがいまとってる行動は、梨子との別れを惜しんでの行動だと思うと、自分の心に正直に動いたトランクスが、可愛く思えた。

　いつもは、クールに振舞って、梨子に興味のなさそうな素振りを見せてるトランクスだが、最後は自分の心に従い、素直に行動したらしい。

　そして、その結果、梨子とバーベキューコンロを囲み、楽しく最後のひと時を過ごしている。

　行動を起こすには、それなりの勇気や覚悟を要するが、その見返りとして、必ず嬉しいことや幸せなことが起きる。

　些細なことかもしれないが、それをいま、体現してるだろうトランクスを見てから、私は、串に刺さった玉ねぎに噛り付き、もう一人のトランクスへと視線を移した。

　それに比べ……。

　楽しそうに話しをしてる、梨子とトランクスの傍で、ただ二人を気にしてるだけの男。

　その姿にガッカリする。

「振られた」という負い目もあるんだろうが、もう最後だ。

　明日には、梨子はこの地球からいなくなる。

　トランクスさん。あんたがまだ梨子を「好き」なことは分かってる。