学校から帰り、自分の部屋へ向かってると、途中の廊下でお兄ちゃんに会った。

「おかえり」

　俺に気付くなり、作ったように微笑む顔を見て、お兄ちゃんも、梨子が明日帰ることを知ったんだって、すぐに分かった。

「ただいま。今日は、お兄ちゃんが見張りじゃないんだね」

　とりあえず、お兄ちゃんが、あの二人の護衛をしてないことを聞くと

「ああ、いまは悟空さんが付いてくれてるんだ」

　お兄ちゃんは穏やかに答えてから

「それで、いまから父さんと重力室でトレーニングするんだけど、トランクスもどうだ？」

　俺が断るのを分かって言ってるのか、少し悪戯っぽい顔で聞いてきた。

　俺はお兄ちゃんの期待通り

「げ、俺はいいよ」

　顔を顰め首を振ってから

「お兄ちゃん、俺の分までしっかりパパに鍛えてもらってよ」

　逃げるように、部屋に向かって足を踏み出した。

　お兄ちゃんの横を通り過ぎ、そのまま部屋へ行こう。

　そう思ったけど

「あ。そう言えば、明日、梨子が第六宇宙に帰るって聞いた？」　

　たったいま思い出したように、俺は後ろを振り返った。

　振り返った瞬間、ハッとしてた顔は

「ああ」

　すぐに動揺を隠すように、小さく微笑むと

「思ったより、早く帰れることになってよかったよ」

　安心した顔を浮かべた。

　明らかに、無理して微笑んでる、もう一人の自分に苛立ちを感じ

「ホントにそう思ってんの？」

　同じ顔を、軽く睨んでた。

　分かりやすく、動揺する青い目を見つめ

「……ま。お兄ちゃんがそれでいいならいいけどさ」