「明日だってさ」　

　分かってるよな？
「帰りたくない」なんて、言わせないからな！

　目に力を込めて、梨子を睨むように見つめると

「……うん」

　という、消え入りそうな返事が返ってきた。

　さすがに、攫われそうになるっていう経験をしたからか、梨子は素直に帰ることを決めたらしい。

　考えてみれば、一昨日の一件がなければ、梨子だけ帰ることにはならなかっただろうから、トワとミラって二人には、ある意味感謝しなければいけないのかもしれない。

　今度会った時に、礼でも言っておくか。

　心の中で、そんな冗談めいたことを言いながら、目玉焼きにナイフを入れると、半熟の黄身が白い皿の上に広がった。

　玉子は生か半熟に限るな。

　トロリとした黄身と、縁がカリッと焼かれた白身を口へ運び、この絶妙な目玉焼きに満足した。

　この絶妙さを、常に提供出来るのが「プロ」なんだと納得してから、我が家の食卓にあがる、いつも焼き加減がまちまちだった目玉焼きを思い出した。

　この四ヵ月、家族のことはあまり思い出さずにいたが、一時とはいえ、帰るとなると、胸のあたりがザワザワと騒ぐのは仕方ないのかもしれない。

　家族は元気にしてるかな……？
　私が突然帰ったら、メチャクチャ驚くだろうな。……そんで、めちゃくちゃ怒られそうだ。

　両親がどんなリアクションをするか、想像してると

「明日帰るなら、みんなに連絡しなきゃね。梨子ちゃんとは、もう会えくなっちゃうんだもの……」

　ブルマさんは梨子を見て、寂しそうに微笑んだ。