梨子の言う「怖い」がどんな怖さなのか伝わってこないが、トランクスさんが普段は見せない顔を、梨子は見たらしい。

　それは、一体どんな顔なんだ？

　ベジータさんや悟空さんとの、身内との手合わせしか見たことない私は、少し気になって

「怖いって、どんなふうに？」

　真っ暗な天井を見つめ、疑問を投げると

「うーん……」と考える声がして

「ちょっと、ベジータさんみたいな感じかな……？」

　まさかの名前が出て来て驚いた。

　いや……親子なんだから、驚くことでもないのかもしれないが、あの穏やかなトランクスさんが、常に不機嫌な、あのオヤジのようになるとは想像し難い。
　
「ベジータさんみたいって、あんな高圧的なわけ？」

　王子だったという理由からか、人を見下したような物言いが目立つ、ベジータさんを思い出し聞くと

「うーん……高圧的とか、そういうのじゃなくて……雰囲気。雰囲気が、ベジータさんみたいになるの。堂々としてて、自信があるみたいな……！」

　その時のことを思い出してるだろう、少しときめきを含んだ声が、左側にある、もう一台のベッドから聞こえてきた。

　その声が気になった私は「ふーん」と返してから

「あのさ。何で、今日、トランクスさんに、遊びに行こうなんて言ったの？」

「まさか」と思いながら、梨子の気持ちを探ろうと、昼間、梨子が突然、トランクスさんを遊びに誘ったことに触れた。

「あんなに避けてたのに、何で？」

　さぁ、何て答える……？

　静かになった左側を、じっと窺ってると