深く頭を下げる彼女の姿に、ショックを受けたことは間違いない。

　でも、それは一瞬だった。

　すぐに清清しい気持ちになったのは、こうなることは予想出来ていたからだろう。

　頭を下げたままの梨子さんに

「梨子さん、顔を上げてください」

　そう言うと、梨子さんはゆっくりと顔を上げ、申し訳なさそうに俺を見つめた。

　いつも明るく輝いている茶色の瞳が、暗く沈んでいるのが心苦しい。

　こんな表情をさせているのは自分のせいだと思うと、想いを伝えてしまったことを、また後悔した。

　しかし、もう「好き」だと伝えてしまい、彼女から「ゴメンナサイ」という答えが返ってきたのだから、このことを真摯に受け止めるしかない。

　俺を見つめていた梨子さんの顔が、俯きかけると

「俺の方こそ、すみませんでした。あなたを困らせるようなことを言ってしまって。本当にすみません」

　制止するように、今度は俺が頭を下げた。

　あの夜のキスや、昨日の告白――。

　この三日という短い間に、俺が取った行動と言動のせいで、彼女にどれほど負担をかけたか分からない。

　頭を下げただけで許されるとは決して思わないが、いまの俺に出来る誠意の表し方はこれしか浮かばなかった。

　ゆっくり顔を上げ梨子さんの表情を覗うと、彼女は戸惑ったような表情を浮かべ

「い、いえ……！　トランクスさんに好きって言ってもらえて……嬉しかったです……。で、でも、その……私、好きな人がいて……。本当にすみません！！」

　と言って、また深く頭を下げた。